生きるべきか死ぬべきか。それが「本当に」問題だった。
「ラファエル前派」って聞いたことありますか?
19世紀末のイギリスで流行った、ミレイ、ハント、ロセッティを中心とした画家集団です。
彼らが描いた作品の中でも、特にこれは来日したこともあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
シェイクスピアの『ハムレット』に登場するオフィーリアが、父親を殺されて溺死する直前に歌いながら川に浮かんでいる場面を描いた作品です。
実はこの作品、制作秘話がかなり壮絶なんです。
描かれている女性はエリザベス・シダルという当時に実在した人物なのですが、ミレイは真冬に彼女を水を張ったバスタブに長時間浮かべたままこの作品を描きました。
彼女は体調を崩して肺炎になりかけてしまいます。彼女の父親はミレイを後に訴えました。まあ、当然ですね。
ただ、彼女の話はここで終わりません。
その後シダルは、ミレイの仲間のロセッティと結婚します。しかし、幸せな生活は送れませんでした。ロセッティの女性関係に悩まされ、結局はアヘンの過剰摂取により自殺してしまうんです。
ロセッティのこの作品に描かれているのは、アヘンに悩まされていた時の彼女です。彼女の死を悲しんで描かれた作品なんです。
おそらく彼女は死ぬべきではなく、生きるべきだった。
でも何も知らない外野の人間には、もしかしたらそんなことを言う資格なんてないのかもしれません。