「2つの間違い」を探せ!
来月、東京ではじまるコートールド美術館展の目玉といえば、やっぱりこの作品。
《フォリー・ベルジェールのバー》というマネの作品なのだが、なんだか「間違い探し」のような印象を覚えないだろうか?
鏡のこちら側と向こう側とで明らかにおかしな部分があるのだ。
しかもそれは1つではない。2つだ。
まずは簡単な方から。女給の位置は明らかにおかしい。正面を向いている実像と斜めを向いている鏡像。現実にはあり得ないフィクションの世界である。
もう1つの間違いには果たしてどれだけの人が気付いただろうか?
手前左の赤い瓶にご注目。実像と鏡像とで中身の量が違うのだ。わずかだが、鏡像の方が少ない。
「実像より鏡像の方が時間的に後の世界が描かれている」ことになる。
どこかボーっとしている女給も男が現れるときっと笑顔で応対しているのだろう。鏡像の彼女は後ろ姿しか見えないが、男が熱心に女給を口説き落としている様子を見ると、そんな想像がわく。
「よく観察すること」は「深く楽しむこと」に直結するという好例だろう。